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シクロフィリン:第1回(PPlase等)

シクロフィリンとは?
シクロフィリンは、臓器移植で使用される免疫抑制剤のシクロスポリンが結合するタンパク質に因んで名づけられた タンパク質でぺプチジルプロリルイソメラーゼ(PPlase)活性を有しています。
このPPlaseは異性化酵素(イソメラーゼ)の一種で、全ての生物に存在し、タンパク質分子中のプロリン残基のシス・トランス異性化を触媒します。

ぺプチジルプロリルイソメラーゼ(PPlase)とは?
アミノ酸間のペプチド結合は、一般にトランス体がシス体に比べて遥かに安定で、この状態が自然に達成されます。
ところがプロリン残基ではその特異な構造により、N側ペプチド結合がシス体としても比較的安定に存在します。

シクロフィリンのPPlase活性を測定する時の基質
Ala-Ala-Pro-PheのMolviewで作成した構造式です。
タンパク質の様な高分子では、シス・トランス体で、
より大きな構造的差異が生じます。


シス

トランス

こちらはAla-Ala-Pro-Pheを静電ポテンシャルマップで
電子密度を示した動画です。ご覧ください。

生物の個体や細胞等の主要な構成分子であるタンパク質はアミノ酸からできていますが、タンパク質が正しく機能するためには タンパク質の正確なフォールディング(折り畳み)が必要がです。
この結合のシス・トランス異性化に必要な活性化エネルギーは約20kcal/molと比較的高いので、この結合は自然には異性化しにくく、フォールディングには プロリン残基の異性化が触媒される必要があります。
プロリルイソメラーゼはここで働きますので、シャペロンの一つということができます。

プロリルイソメラーゼの例としては、真核生物のシクロフィリン、FKBP、Pin1、原核生物のパルブリン等があります。
プロリルイソメラーゼは同じ種類のタンパク質に対しても活性があり、自己フォールディングを促進します。
シクロフィリンとFKBPはそれぞれある種の免疫抑制剤の標的タンパク質でイムノフィリンと総称されます。
これらは免疫系の調整で中心的な役割を果たすカルシニューリン等、シグナル伝達に関わるいくつかのタンパク質複合体の活性発現に必要ですが、 免疫抑制剤と複合体を形成すると逆にこれらタンパク質複合体を阻害することもあります。但し、この性質には、プロリルイソメラーゼ活性が直接関与しない可能性もあります。

次に、シャベロンについて説明します。

シャペロンとは?
他のタンパク質分子が正しい折り畳み(フォールディング)をして機能を獲得するのを助けるタンパク質の総称です。
分子シャペロン、タンパク質シャペロンともいいます。
シャペロンはあくまでネイティブ構造の形成がなされやすい環境、または機会を提供するだけですが、シャペロンの機能はフォールディングの補助だけではなく、 タンパク質の品質管理(複合体形成、輸送、リフォールディング、脱凝集)も担っています。
これらの機能は生命活動において必須事項であるため、シャペロンは必要不可欠な存在です。
分子シャペロンの異常は、細胞の恒常性維持に関わるタンパク質の機能不全を引き起こします。具体的には、代謝系の異常、腫瘍の進行、神経変性疾患、 心血管障害などの病気の進行の要因となると考えられています。
また、別の見方をすれば、細胞内に存在する個々のタンパク質のコンホメーション、結合相互作用、局在および濃度の制御(タンパク質恒常性)が適正化 かつ維持されるためにはシャペロンは必須の要素とも言えます。
シャペロンは以下の様に分類されます。

熱ショック対応
多くのシャペロンは熱ショックタンパク質(HSP)であり、温度の上昇による損傷を抑制するための熱ショック応答を担います。つまり タンパク質のフォールディングが熱によって変性した場合に、そのタンパク質の折り畳みを適切になるよう制御します。

低温ショック応答
低温ショック応答を担うRNA結合性シャペロンの一群を低温ショックタンパク質(Csp)(RNAシャペロン)と呼びます。Cspは、RNA上に生じた余分な二次構造を 一本鎖状にほどき、遺伝子発現とタンパク質合成を可能にします。

新生タンパク質のフォールディング
ほとんどのタンパク質はシャペロンなしでも折りたたまれますが、一部にはシャペロンを必須とするものもあります。翻訳を経て新規合成されたばかりの ポリペプチド鎖のフォールディングに限定すれば、シャペロンが必要なタンパク質は、細胞内タンパク質の30%に及ぶそうです。
新生ポリペプチド鎖の多くがシャペロンを必要とする理由は、作られたばかりでは疎水性のアミノ残基は周囲の水分子に露出しており(天然体では疎水性残基は内部にあり、 周囲の水分子から隔離されている)、水分子から逃れるために最初に遭遇した他の疎水性残基と結合しようとするためだそうです。最も近くの疎水性領域は本来の結合相手でない場合が多く、 手当たり次第の相互作用は間違ったフォールディングを導くそうです。こうしてフォールディングに失敗したタンパク質は凝集する傾向があり、凝集したタンパク質は細胞にとって非常に有害である (例としては牛海綿状脳症の原因であるプリオンタンパク質や、アルツハイマー病の原因となるβアミロイドタンパク質など)ことが多い様です。
シャペロンは、正しい結合相手が現れるまで新生ポリペプチドの疎水性部分を水分子から隠す働きを持ちます。通常のシャペロンは、内部が疎水性領域となっているポケットを 持ち、ここに基質を格納します。基質の疎水性領域はポケット内の疎水性領域と相互作用し、不適切な結合は抑制されます。

ヒストンシャペロン
ヒストンシャペロンとは、ヒストンを裸のDNAに結合させてヌクレオソームを形成させるタンパク質です。このタンパク質の役割は、転写の際に一次的にクロマチン上 からヒストンが取り除かれて不安定化したヌクレオソームを元通りにすることです。この不安定化は、RNAポリメラーゼがヌクレオソーム内部の転写領域に接触して転写を行うために実行されていると考えられていて、ヒストンシャペロンとして、 クロマチン転写促進因子(FACT)が知られています。
(「シャペロンについて」は、Wikipediaのシャペロン(https://ja.wikipedia.org/wiki/シャペロン)から引用しました。)

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