転写因子とは、DNA→RNA→タンパク質という生命のセントラルドグマにおいて、生命の設計図であるDNAからその時々において必要とするあるいは何らかの刺激の結果であるタンパク質の鋳型であるRNAを転写(写し取る)する要素のことです。転写因子には、AP−1、CREB、NFAT、NFkB、PPAR、それにHIFなどがありますが、ケアティスではNFAT(Nuclear factor activated Tcell)とHIF(Hypoxia inducible factor)に注目し、その簡易活性スクリーニング法や作用(活性化、抑制)物質の合成化合物あるいは天然素材からの抽出物についてライブラリーの構築を進めています。
NFAT転写因子は、カルシウム及びカルモジュリン依存型セリン脱リン酸酵素やカルシニュ‐リンにより活性化されます。脱リン酸化の後、NFATは核に移行し、AP1、GATA、EGR、Oct、MEF2、PPARγやHDACなどの種々の転写因子と相乗的に作用します。引き続きNFATはリン酸化され、GSK3、p38−MARKやPKAなど種々のキナーゼにより不活性化されます。このようにNFAT活性制御は細胞分化プログラムに重要な役割を果たす遺伝子の発現に関連しています。このことから、様々な分野への治療薬開発への治療応用が期待されています。
一方、ハイポキシア(低酸素)で誘導されるタンパク質や酵素は多いのですが、その例として、赤血球増殖因子であるエリスロポエチン(EPO)、血管内皮細胞増殖因子であるVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)やその受容体、血管に働くエンドセリン−1、誘導型−酸化窒素合成酵素、グルコースを細胞に輸入するグルコース輸送体(GLUT1)などがあります。癌などの血管新生が盛んなところ、あるいは、脳への血流が停止または低下した場合には、脳内でもこのHIF活性が亢進していると報告されています。
このことから、HIFの活性を調整できる物質が見つかれば、癌の治療や種々の再生医療、あるいは虚血状態から組織を守る治療薬が開発できるものと期待されています。
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